ふせんを1回も使わず一気読みしてしまいました😄
今回読んだ小説は、女のドロドロした感情を徹底的に描写する真梨幸子先生の「弧虫症」
主人公は週に3回、夫以外の男とS〇Xすることを習慣にしている主婦・麻美。
彼女の不倫相手が次々に身体全体に瘤のようなものを作って原因不明の死を遂げる。
そして、彼女自身の肉体にも異変が・・・。
夫以外の男とS〇Xすることを習慣にしている、といういきなりぶっとんだ設定の主人公です。
その生活が描かれるので、いやらしくてだらしなくて、つじつま合わせに嘘をつくし・・・とんでもないな、と思うのにいつの間にか主人公に共感しながら読んでたりします。
全然自分とは似ても似つかない主人公なのに、細かな心理描写やリアルな温度感で、追い詰められていく焦燥感を一緒に味わっているような気分に。
そのうちに原因不明のコブだとか、不倫相手が死んでしまったり・・・非現実的なことが次々に起こるので、読んでいるとだんだん現実なのか、主人公の妄想なのか分からないようなふわふわした気分になってきます。
話の中でとある病気の症状が描かれるんですが、正直グロいです。
ひええ、と思いながらホントにある病気なのかフィクションなのか気になったので、ネットで検索してみるとホントにある病気でした😨ひええ・・・。
物語は1章が主人公の麻美視点。
そして2章からは主人公の妹の奈未視点に切り替わります。
語り手が変わると世界の色がガラッと変わってしまい、1章では親切で優しい女性だと思っていた人が、急にいやらしく、お節介な女に見えて戸惑います。
何が起きているのか、誰の見ているものが正解なのか・・・物語の世界に引き込まれていきます。
ポイントとしては1章に隠された違和感に気づけるかどうか・・・不幸な女は誰?嘘つきな女は誰?嫉妬してる女は誰?
女の暗いドロドロした感情がそこここにべったりとまとわりつくような雰囲気です。
私が真梨幸子さんの好きなところは、ドキッとするようなリアルな感情の描写。
例えば
映っていたのは、ひりひりと歪んだ私の意地悪顔だった。初めて見る顔だった。不意打ちだった。いつもはこんな顔じゃないのに。それとも、これが私の本当の顔なのか。『女が自ら鏡をのぞくとき、女は最高の表情で臨む』。誰の言葉かは忘れたが、あながち嘘ではないのかもしれない。(中略)
引用:「弧虫症」真梨幸子 本文より
瞬時のうちに、私は、意地悪な歪み顔を補修しているのかもしれない。鏡の前だけでは。
私って、ふだんどんな顔してる・・・?
と、周囲の人に聞きたくなるような、「私もかな」と思わせるような場面。女の嫌なところをぐりぐりと指摘してきます。
しっかりとした厚みのある小説なのに、物語の裏側にはやく辿り着きたくてページをめくる手が止まりません。
一気読みしたい方、このバイオでサイコなミステリー「弧虫症」をぜひ手に取ることをおすすめします。